

著者
ほうれい線治療専門
東京リンクルクリニック
院長 沖津茉莉子
ドクター紹介はこちら
「ボトックスを打つとしわが消えるの?」「小顔になるの?」
「でも、失敗したらどうしよう?」──そんな疑問や不安を抱えたことはありませんか?
ボトックス治療は、しわや多汗症、小顔効果など多くの美容ニーズを満たす人気の施術ですが、効果がはっきり分かる一方で、リスクや注意点を知らずに受けて後悔するケースもあります。
たとえば、瞼が下がる、表情が不自然になるといったトラブルを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ボトックスの基本的な仕組みから適切な効果を引き出す方法、さらにはリスクを最小限にするポイントまで徹底解説します。
美容クリニックで最も愛され治療の一つであるボトックスを最大限に活用し、リスクを回避して理想の美しさを手に入れましょう!
目次
ボトックスとは?基本の知識
ボトックスは菌ではなく菌が生み出すタンパク質
ボトックスは、自然界に存在するボツリヌス菌とよばれる細菌がつくる「A型ボツリヌストキシン」という毒素(タンパク質)を主成分とする薬剤のことです。
ボトックスを筋肉に打つことで、神経から筋肉に出される指令の伝達を遮断し、筋肉の過剰なはたらきを抑え、さまざまな症状を改善できます。
自由診療分野ではしわ治療のほか、多汗症や痩身の治療として幅広く使用されています。
ボトックスとボツリヌストキシンの違い
実は「ボトックス」とは製品名で、アメリカのアラガン社という会社が最初に製造したボツリヌストキシンの製剤を指します。
その後、他の会社からも同様のボツリヌストキシン製剤が開発され、厳密に言うとそれらは「ボトックス」ではなく「ボツリヌストキシン」ですが、総称してボトックスと呼ぶ場合もあります。
ロキソニン(製品名)とロキソプロフェン(成分名)のような関係です。
ボトックスの単位数とは?
ボトックスの投与量は通常のccやmlではなく「単位」で表されます。
これは、ボトックスの製剤が液体やジェルではなく粉末状であり、生理食塩水に希釈して使用するためです。希釈の方法により1ccあたりのボトックスの成分量が変わるため、効果を正確に調整するために単位数で管理します。
たとえば、眉間では10〜16単位、エラでは40〜100単位など、部位や筋肉の大きさ、動きの強さ、希望する効果の程度に応じて適切な単位数を投与します。
ボトックスの効果・適応部位
ボトックスは筋肉の過剰なはたらきを和らげる効果があり、しわ、多汗症、痩身など様々な治療に使われています。
当院のボトックス治療で得られる効果と、必要な単位数の目安を以下にあげます。
表情じわの改善
表情じわとは、無表情のときには目立ちませんが、表情を作るときに現れるしわです。
表情筋と呼ばれる顔の筋肉が過剰にはたらくことで生じます。
ボトックスを表情筋に打つことで、筋肉の過剰な動きが抑えられ、表情じわが改善します。
額 8〜12単位
前頭筋に打つことで、目を見開いたときにでる額の横じわを改善します。
眉間 10〜16単位
鄒眉筋に打つことで、眉をひそめたときにでる眉間の縦じわや眉上の筋肉の凹凸感が改善します。
目尻 10〜12単位
眼輪筋の外側に打つことで、笑ったときに目尻にでるカラスの足跡のようなしわを改善します。
目の下 8〜10単位
眼輪筋の下方に打つことで、笑ったときに目の下にでる細かいしわを改善します。
目頭 4〜6単位
眼輪筋の内側に打つことで、笑ったときに目頭にでる細かいしわを改善します。
鼻根 10〜12単位
鼻根筋に打つことで、笑ったときや顔をしかめたときに目と目の間にでる横じわを改善します。
バニーライン 10〜12単位
鼻筋に打つことで、笑ったときに目頭から鼻の上に斜めにでるウサギのようなしわを改善します。
口の上 8〜10単位
口輪筋に打つことで、口をすぼめたときや物を吸うときに口の上にでる縦じわを改善します。
顎 12〜16単位
オトガイ筋に打つことで、口をすぼめたときや口を閉じるときにでるあごの梅干しじわを改善します。
しわ以外の顔のパーツへの効果
ボトックスには表情じわの改善以外にも、顔のパーツの形状を整えたり魅力的な印象に見せる効果があります。
ほうれい線 8〜10単位
笑ったときに深くなるほうれい線はボトックスで改善できます。ただし、無表情のときにでているほうれい線には効果がありません。
ガミースマイル 8〜10単位
上唇鼻翼挙筋や上唇挙筋に打つことで、笑ったときに上の歯茎がむき出しになる癖を抑えられます。
口角 8〜10単位
口角下制筋に打つことで、微笑んだときに口角が上がりやすくなり、口元のたるみの予防にもつながります。
人中 6〜8単位
唇の上の口輪筋に打つことで、上唇が立ち上がり人中(鼻の下)が短く見えます。
タレ目 6〜8単位
眼輪筋の外側下方に打つことで、白目の見える部分が広がり印象的な目元になります。
小鼻 6〜8単位
小鼻の鼻筋に打つことで、鼻の穴が広がりにくくなり小鼻がすっきり見えます。
小顔・痩身治療
ボトックスは筋肉の過剰なはたらきを抑えることで筋肉を萎縮させ、ボリュームを減少させる効果があり、小顔治療や痩身治療として応用されています。
エラ(咬筋)40〜100単位
咬筋に打つことで、エラ張りの輪郭が整いすっきりと小顔に見えることから、非常に人気のある治療です。食いしばりや歯ぎしりのクセが解消し、顎関節症の改善にもつながります。
3〜6ヶ月ごとに数回打つことで咬筋が小さくなり効果を長く維持できるようになります。
側頭筋 40〜100単位
食いしばりや歯ぎしりのクセがある方は、咬筋以外に側頭筋も発達している場合があります。側頭筋に打つことで、食いしばりの解消になるほか、こめかみの張り出しを抑えられます。
側頭筋が過緊張することで起こる頭痛の解消にもつながります。
唾液腺(耳下腺・顎下腺)40〜80単位
耳の前あたり(耳下腺)や左右のあご下(顎下腺)に打つことで、顔まわりがすっきり見えます。
唾液の分泌が抑えられるため、口が渇きやすくなる副作用があります。
首(広頚筋)40〜100単位
広頚筋に打つことで、食いしばったときに首の両側にでる縦すじが目立たなくなります。また、フェイスラインやあご下がすっきりし、顔まわりのたるみの予防にもつながります。
肩 100〜200単位
僧帽筋に打つことで、肩こりが軽減するほか、肩の張りが抑えられ首がすらっと長く華奢に見えます。
ふくらはぎ 200〜300単位
腓腹筋に打つことで、ふくらはぎの盛り上がりが抑えられ、膝下がすっきりと細く見えます。
太もも 200〜300単位
大腿四頭筋に打つことで、太ももの前面や外側の張り出しが抑えられ、すっきりと細く見えます。
二の腕 100〜200単位
上腕の筋肉群(上腕二頭筋、上腕三頭筋、三角筋)に打つことで、力こぶや二の腕の張り出しが抑えられ、すっきりと細くみえます。
多汗症治療
ボトックスは汗腺のはたらきを抑制することで、汗の量を軽減したり匂いを抑える作用があります。
脇 80〜120単位
脇の汗の量を減らし匂いを抑える効果があります。汗染みもほとんど気にならなくなり、オールシーズン快適に過ごせます。
手の平 80〜120単位
手の汗の量を軽減できます。
足の裏 100〜200単位
足の裏の汗の量や匂いを軽減できます。
頭皮 100〜200単位
頭皮からでる汗の量や皮脂分泌を抑えることができます。
にきび・毛穴・肌質改善
ボトックスには肌質を整え、肌トラブルを防ぐ効果もあります。
マイクロボトックス 20〜60単位
皮膚の浅い層に微量ずつ打つことで、汗や皮脂分泌を抑え、にきびの改善効果があるほか、毛穴を引き締める効果があります。鼻やTゾーンで20単位、頬全体で40単位、顔全体で60単位がおおよその目安です。
ボトックスの持続期間
個人差や使用する製剤による差もありますが、一般的には3〜6ヶ月前後です。
また、エラ張りや痩身の治療では、ボトックスによってはたらきが抑えられた筋肉が徐々に萎縮していくため、治療の回数を追うごとに筋肉のボリュームが減少し、効果を長く維持できるようになっていきます。
ボトックスのリスク・副作用
ボトックスは注射の治療であるため、針を刺すことで生じるリスクがあります。
また、ボトックスの製剤によって起こるアレルギーや、ボトックスの効果が強く効きすぎることによって生じる副作用もあります。
起こりうるリスク
腫れ
ほとんど目立ちませんが、施術後注入箇所が薬液によって膨らみ、軽度の赤みが生じることがあります。
通常は数時間〜1日で落ち着きます。
内出血
注入箇所に内出血がでる場合があります。出血しやすい方、血が止まりにくい方、皮膚の薄い方、抗凝固剤を内服中の方などで特に起きやすいです。
通常はメイクでカバーできる程度で、1〜2週間で消退します。
左右差
人の体は左右非対称であり筋肉のつき方や動かし方も左右で差があります。
施術の際は元の左右差を確認した上で、できる限り左右の仕上がりのバランス整えるよう工夫いたしますが、完全に左右対称にすることはできません。
違和感・重たさ
施術後注入部位につっぱりや重たさなどの違和感が生じることがあります。
ボトックスの効き始めや初めてボトックスを受ける方で生じやすいです。
通常は1〜2週間で軽快していきます。
頭痛
稀ですが、施術後頭痛が出る場合があります。
眉間のボトックスで起こりやすく、通常は数日〜1週間ほどで軽快します。
症状が辛い場合は、鎮痛剤(カロナール/アセトアミノフェン)の内服が有効です。
非常に稀なリスク
感染
注射の施術全般に言えることですが、注入時に皮膚の常在菌が皮膚の中に入ることで感染が起こることがあります。
施術部位は十分に消毒をおこなっておりますが、ごく稀に起こりえます。
ボトックスの場合、万が一感染が生じたとしてもニキビができる程度の軽症なものがほとんどです。
血腫
注射の施術全般に言えることですが、注入時に皮膚の中で起きた出血が長時間止まらず、皮膚の中で血の塊(血腫)ができてしまうことがあります。
ボトックスでは非常に稀ですが、出血が止まりにくい体質の方や抗凝固剤を内服中の方は起こる可能性があります。
万が一血腫ができてしまった場合は、皮膚の中で自然に吸収されるのを待ちますが、数ヶ月以上かかることがあります。
アレルギー反応
ごく稀ですが、ボトックスに対してアレルギー反応が起きる可能性があります。症状としては注入部位の赤み・腫れ・痒み、全身の蕁麻疹などがあげられます。
これはボトックスの主成分であるボツリヌストキシンというよりは、製剤を安定化するために使用されるヒト血清アルブミンや複合タンパクに対するアレルギー反応である場合がほとんどです。
そのため、もともとヒト血清アルブミンに対するアレルギーのある方は、それを含むボツリヌストキシン製剤での治療は受けられません。
ヒト血清アルブミンも複合タンパクも含まない製剤には、韓国製のコアトックスがあります。
嚥下困難・呼吸困難・全身性筋麻痺
通常で起こりえないことですが、ボトックスを大量に投与した場合、呼吸筋や嚥下筋の麻痺など全身への影響が生じ、最悪の場合死亡する可能性もあります。
具体的な致死量は70kgの成人で3000単位といわれています。
美容クリニックでおこなう施術において、使用するボトックスの上限は300〜500単位であるためこの量に到達することはありませんが、施術部位によっては大量投与によって息苦しさや飲み込みづらさなどの中毒症状が出る可能性もあるため、複数のクリニックで同時期にボトックスの治療を受ける場合などはトータルの投与量に十分注意しましょう。
また、神経筋接合部の疾患がある方にボトックスを投与した場合、少量であってもボトックスが効きすぎてしまい、このような副作用が強く出る可能性があるため、そのような疾患がある方の治療はおこなっておりません。
効きすぎによる副作用
ボトックスによって表情筋の動きが抑えられることで、不自然な表情や顔つきになる場合があります。また、筋肉をうまく使えないことで日常生活に支障をきたす可能性もあります。
ボトックスが効きすぎてしまった場合、ボトックスの拮抗剤(オビソード)を打つことで効果を和らげる場合もありますが、拮抗剤は一度ではなかなか効いてくれないのが難点です。
通常、ボトックスの効果は施術後1〜2週間がピークになるため、効きすぎてしまった場合は1ヶ月ほど辛抱強く経過を見ることで症状は落ち着いてきます。
とはいえ、人前に立つお仕事や大事なご予定がある場合は、効きすぎは大変な問題になりますので、当院ではご希望に応じてボトックスの投与量を減らしたり打ち方を変えるなどの調整をしています。
以下にボトックスが効きすぎることによって生じる副作用をあげます。
瞼が下がる
額や眉間のボトックスによって瞼が下がり目が腫れぼったく見えたり、二重幅が狭く見えることがあります。
前頭筋にボトックスが効きすぎることで生じるため、投与量を減らしたり、額の下半分を軽く効かせることで防止できます。
額のボトックスは特に奥が深く、医師の腕の見せどころです。
眉尻が上がる
眉間のボトックスで眉尻が不自然に上がり怒ったような顔つきになる場合があり、これをスポックブローと呼びます。
もともと眉毛を上げるクセがある方で、前頭筋の内側下部にボトックスが効くことで起こります。
この場合は眉尻にボトックスを少量追加することで改善できます。
目が笑えない・涙袋が消える
目の下にボトックスが効きすぎることによって、笑ったときに目の下が動かず目が笑っていないように感じることがあります。
また、涙袋は目の下の眼輪筋が収縮することによって保たれているため、ボトックスの作用により眼輪筋の収縮が抑えられ、涙袋が目立たなくなったり消えてしまう場合があります。
鼻の下が伸びる
ほうれい線やガミースマイルのボトックスなど、上唇を上に上げる筋肉に効かせるボトックス治療では、常に筋肉がゆるんだ状態になるため、真顔のときでも鼻の下が長く見えることがあります。
口がもごつく・食べ物がこぼれる
口の上や口角、あごのボトックスなど、口元の筋肉に効かせるボトックス治療では、ストローや食べ物を吸いにくくなったり、話すときに口がもごついたり、口がうまく閉じれず食べ物や唾液が口からこぼれやすくなったりする場合があります。
頬がたるむ・こける
エラのボトックスが効きすぎたり頻繁に打ちすぎると、咬筋のボリュームが大幅に減り頬がこけて見えたり、余った皮膚がたるみとして目立つ場合があります。
そのため、エラボトックスを打つ際は、頬がこけないよう咬筋の外側や下の方に工夫して打ったり、すでに頬こけや頬のたるみが目立っている場合は治療を控えるなど注意が必要です。
また、エラボトックスでは、咬筋に対する薬剤の投与量が多すぎたり、咬筋の内側や上方まで攻めて打ってしまうと、頬こけの悪化以外にうまく笑いにくくなるなどの副作用が生じるため慎重におこなうべきです。
ボトックスを打つと抗体ができる?
稀ですが、ボトックスをくり返し打つことで、ボトックスが効きにくくなったり効果の持続が短くなることがあります。
この原因として、ボトックスの成分であるボツリヌストキシンが、もともと私たちの体の中に存在する物質ではないため、体に投与した際に異物(抗原)として認識され、抗体がつくられるという免疫反応が起きている可能性があります。
ボトックスに対する抗体が一度できてしまうと、投与されたボトックスを排除しようとするはたらきが強まり、ボトックスの効果が出にくくなったり効果が出ても短期間で切れてしまうようになります。
抗体ができやすくなる原因
以下の場合、ボトックスに対する抗体ができやすくなります。
治療の頻度が多い
ボトックスを短期間で頻繁に打ちすぎると、抗体ができやすくなります。
特に同一部位に打つ場合は、最低でも3ヶ月は空けるようにしましょう。
一回の投与量が多い
一回の治療における投与量が多いければ多いほど、抗体ができやすくなります。
痩身や多汗症の治療では、一回に高用量を投与することが多いため注意が必要です。
製剤の不純物が多い
ボツリヌストキシンの製剤の中には、主成分のボツリヌストキシン以外に複合タンパクを多く含むものもあり、抗体が産生されるのはこの複合タンパクが原因であるとされています。
複合タンパクが除去されている製剤には、ドイツ製のボコーチュア(ゼオミン)と韓国製のコアトックスがあります。
抗体ができる確率は低い
抗体ができることによってボトックスが効かなくなる可能性は、実際にはとても低いです。
例えば、眉間のボトックスなど少量の投与の場合、その可能性は0.28%以下であり、これは357人に1人以下の確率です。
ボトックス治療で効果が得にくい場合、抗体ではなく、手技や投与量、調剤方法、品質管理などが原因のことがほとんどであるため、まずはそちらを疑うべきです。
額のボトックスで瞼が下がる?
額のボトックスで瞼が下がる原因
額のボトックスで瞼が下がるのは、実は目元に原因があります。
もともと眼瞼下垂(瞼を開ける筋力がうまく瞼に伝わらない)の症状があったり、瞼のたるみが強い場合、目だけの力では瞼を十分に開けられず、視界を確保するために額の筋肉が無意識に動いて瞼を上げようとします。
すると、眉がぐっと持ち上がり額にしわが寄ります。
目元に問題のある場合は、こういった状態が常に続いています。
この状態で額のしわを改善しようと額にボトックスを打ってしまうと、眉を上げる筋肉をうまく動かせなくなり額にしわは寄らなくなりますが、それまで無意識にしていた瞼を上げる動作ができなくなるため瞼が一気に下がります。
このようなことから、もともと目元に問題がある場合、額のしわ治療として安易にボトックスを打ってしまうと、目が開きづらい、目が腫れぼったく見える、二重幅が狭く見える、など副作用が強く出ます。
額のボトックスで瞼が下がりやすい目元の問題
額のボトックスで瞼が下がりやすい目元の問題を以下にあげます。
眼瞼下垂
瞼を開けるための筋肉・神経・腱膜に何らかの異常があり、瞼をうまく開けられなくなる疾患です。
眉毛下垂(額のたるみ)
眼瞼下垂と間違えられることがありますが、瞼を開ける機能には異常がなく、額の皮膚が老化などによってたるみ、眉が垂れ下がって視野が狭くなる状態です。
眼瞼皮膚弛緩(瞼のたるみ)
こちらも眼瞼下垂と間違えられることがありますが、瞼の皮膚が老化などによってたるみ、まつげの生え際に被さって視野を狭くてしまう状態です。
瞼が下がってしまったときの対処法
万が一額のボトックスによって瞼が下がってしまった場合、以下のような対処法があります。
ただし、いずれも確実な効果は期待できないため、現実的にはボトックスの効果が減弱するまで1ヶ月ほど経過をみることになります。
ボトックス拮抗剤(オビソード)を打つ
ボトックスが効きすぎている箇所にオビソードを注射することで、ボトックスの効果を和らげる作用がありますが、一度での確実な効果は得にくく、週一ほどのペースで複数回の治療が必要です。
温めながらマッサージする
ボトックスは熱に弱い性質があるため、注入箇所を温めたりマッサージによって血流を良くすることで効果が減弱する可能性があります。ただし確実な効果は得にくいです。
瞼が下がらないようにする解決法
もともと目が開けにくかったり、瞼が重たい方は額にボトックスは打たないほうが良いですが、ある程度であればボトックスの量や打ち方によって調整できる場合があります。
ボトックスの投与量を減らす
額に全くしわが寄らなくなるほどしっかりとボトックスを効かせるのではなく、額に少ししわが寄ったり眉が少し上に動く程度の効き方になるよう、ボトックスの投与量を減らすことで瞼が下がりにくくなります。
ただし、しわに対する効果は当然弱くなり、効果が切れるのも早くなります。
ボトックスの打ち方を工夫する
額の下半分の中央寄りにボトックスをしっかり効かせてしまうと瞼が下がりやすくなるため、この部分は打たない、もしくは少量を浅めに打つなどして調整をおこなうことで、瞼が下がるのをある程度防止できます。
ボトックス以外のしわ治療に切り替える
上記の2点をおこなっても瞼が下がる場合は、そもそもボトックスの治療が向いていません。
額のしわが気になる場合は、ヒアルロン酸や脂肪注入など額の筋肉には影響せず、額にハリやボリュームを出すことによって皮膚をピンと張らせ、しわを寄りにくくさせる治療に切り替えると良いでしょう。
根本的な原因を治療する
前述のとおり、額のしわは目元に何からの問題があり、瞼をうまく開けにくいことが原因で生じることが多いため、その場合は目元の問題を治療することが額のしわの根本的な解決につながります。
ボトックスの禁忌|治療を受けられない方
ボトックスは安全性の高い治療ですが、中には治療を受けられない方や、一定の期間治療を控えなければならない方、飲み合わせに注意が必要なお薬などもあります。
妊娠中・授乳中・妊娠の可能性のある方
妊娠中・授乳中・妊娠の可能性のある方はボトックスの治療を受けられません。
これは、ボトックスの胎児や母乳に対する影響について、十分な研究がおこなわれていないためです。
海外では、妊娠初期にボトックスを大量に投与し胎児が死亡した例も報告されています。
そのため、妊娠中や授乳中、妊娠の可能性がある場合は治療を控えることはもちろん、ボトックス治療を受けてから最低3ヶ月は男女共に避妊するようにしましょう。
ボトックスに対してアレルギーがある方
今までボトックス治療を受けた際に、アレルギー反応が出た経験のある方は治療は控えるべきです。
非常に稀ですが、ボトックスの治療後アレルギー反応が出ることがあります。
症状としては、治療箇所の腫れ・赤み・かゆみなどがあげられます。
これは、ボトックスの主成分のボツリヌストキシンに対するアレルギーというより、製剤に含まれるヒト血清アルブミンや複合タンパクに対するアレルギーであることがほとんどです。
そのため、ヒト血清アルブミンに対するアレルギーがある方は、これが含まれるボツリヌストキシン製剤での治療を受けることができません。
ヒト血清アルブミンの含まれていない製剤には、韓国製のコアトックスやイノトックスがあります。
コアトックスに関しては複合タンパクも含まれていないため、最もアレルギー反応のリスクが少ない製剤といえます。
ボトックス治療後のアレルギー症状は、上記のような軽度なものが多いですが、ごく稀に蕁麻疹や、目や唇など粘膜の腫れ、喉の違和感、嘔吐、下痢、動悸など全身症状が出る場合もあり、最悪の場合、呼吸困難やショックなどのアナフィラキシー反応が生じる可能性もあります。
ボトックスで一度でもアレルギー反応が疑われた場合は、それ以降の治療は控えた方が良いでしょう。
神経筋接合部の疾患がある方
重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など全身性の神経筋接合部の疾患がある方はボトックス治療は受けられません。
神経筋接合部とは、末梢神経から筋肉に指令がいく部位で、この部位に障害があると神経からの筋肉への指令がうまく伝達せず、筋力が低下し筋肉が萎縮します。
ボトックスはまさにこの神経筋接合部に作用し、神経からの指令をブロックして筋肉の過剰なはたらきを抑える治療であるため、もともとこの部位に障害のある方がボトックスを受けた場合、症状が悪化する可能性があります。
併用に注意が必要な薬剤
筋弛緩作用のある薬剤を使用している方は、ボトックスを受ける場合に注意が必要です。
ボトックスによって筋弛緩作用が増強し、口渇、嚥下困難、閉眼不全などの症状が出現することがあります。
・筋弛緩剤(ダントロレン、ツボクラリン)
・抗生剤(アミノグリコシド系、ポリペプチド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系)
・精神安定剤(ベンゾジアゼピン系、ベンザミド系)
・抗コリン剤
・抗痙縮剤
以上は注意が必要な薬剤ですが、中にはニキビの治療薬や睡眠薬や抗不安薬など、一般的に処方されることが多い薬剤も含まれるため、ボトックスを受ける前に一度確認をしておきましょう。
ボトックス治療後の注意点
せっかくボトックスを打ったのに、治療後のケアが悪いと適切な効果が得にくいことがあります。
ボトックス治療後の注意点は、体を長時間温めすぎないことと、治療部位を強く揉んだりマッサージしないことです。
ボトックスは熱に弱い
ボトックスの主成分はボツリヌストキシンというタンパク質であるため、熱を与えると変性し活性が低下することで、適切な効果を発揮しにくくなる可能性があります。
そのため、治療後1週間は以下のことに気をつけましょう。
入浴・温泉・サウナ・岩盤浴
熱い湯船に長時間浸かるなどすると、治療箇所の体温が上昇し、ボトックスの効果が減弱する可能性があります。治療後はシャワーで済ませると良いでしょう。
運動・スポーツ・ジム
激しい運動をすることで体の深部体温が上がり、ボトックスの効果が減弱する可能性があるため、治療後は軽いストレッチくらいにとどめましょう。
飲酒
治療後の飲酒がボトックスの効果に影響するかについては諸説ありますが、飲酒によって深部体温が上昇したり血行が良くなることでボトックスの効果が出にくくなる可能性は考えられます。
ボトックス後のマッサージはNG
ボトックスの治療箇所を強く揉んだりマッサージをすると、薬剤が広がって効果が減弱したり、周囲の別の筋肉に効いてしまい、予想外の副作用が生じることがあります。
たとえば、エラのボトックスを受けた直後にフェイシャルマッサージをおこなったり美顔器を使用したりすると、ボトックスの薬剤がエラの周囲の笑う筋肉にも効いてしまい、うまく笑えず不自然な表情になることがあります。
治療後ボトックスが筋肉に浸透し、効果が安定するまでに1週間ほどかかるため、その間は治療部位は優しく触ったり負担をかけないようにしましょう。
まとめ
ボトックス治療は効果がはっきりとわかりやすく、気軽に受けられて費用対効果も高く、幅広い世代でとても人気のある治療です。
ただし、受ける方が非常に多く施術も数分で終わる簡単な治療であることから、ボトックスを軽視するクリニックも多く、事務的にぱぱっと注射を打たれ思うような効果が得られなかったり、予想外の副作用が出てしまい効果が切れるまでの数ヶ月間とても嫌な思いをした、という方もいるかもしれません。
ボトックスは明確な効果が出る治療であるため、裏を返せば注入の技術が結果に直結します。
治療の際はカウンセリングをしっかりおこない、希望どおりの効果が得られるよう医師とじっくり相談した上で施術を受けられる、信頼できるクリニックで受けることが大事です。
当院はしわ治療を専門におこなっており、施術者である私はボトックスだけでもこれまで数万人のお客様に施術してきました。
カウンセリングには十分な時間をとり、いままでの治療のご経験やどういったニュアンスの効果を希望されるかを伺い、その上で一人一人に合わせた施術をおこなっております。
メールでの無料カウンセリングもおこなっておりますので、ボトックス治療でお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。