

著者
ほうれい線治療専門
東京リンクルクリニック
院長 沖津茉莉子
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鏡を見るたびに、口元の影にショックを受ける。
「最近、ほうれい線が急に深くなってきた気がする…」
「このまま一気に老け込んでしまうのではないか…」
そんな不安を抱え、インターネットやSNSで必死に情報を探している方は少なくありません。
その中で、近頃目にする機会が増えてきたのが「ほうれい線の剥離」という治療法です。
一見すると聞きなれない新しい言葉で、まるで画期的な最新治療のように思え、強い効果が期待できそうに感じるかもしれません。
実際、ほうれい線治療専門である当院にも「剥離を受けたほうがいいのか、それともグロースファクターの方がいいのか」と迷われてご相談に来られる方がたまにいらっしゃいます。
ネット上では「癒着が原因だから剥離で治せる」と書かれた宣伝を目にすることもあり、期待と不安の間で揺れ動くのも無理はありません。
もちろん、私自身も美容外科医であるため、剥離の技術を当院で治療として提供することは可能です。
しかし、あえてそれを「商品」として打ち出していないのには理由があります。
なぜなら、ほうれい線の主な原因は癒着ではなく、皮膚そのもののコラーゲンやエラスチンの減少によるハリの低下だからです。
そのため、剥離だけでは十分な改善が得られず、むしろリスクの方が先行してしまうことも多いのです。
その一方で、皮膚の再生を促すグロースファクター治療は、侵襲性が少なく安全で、表情の動きに自然に馴染み、長期的に若々しさを取り戻すことができる“ほうれい線の根本的な治療法”です。
だからこそ、私は自分の経験と技術を持ちながらも「剥離」ではなく「グロースファクター」を第一選択としておすすめしています。
本記事では、なぜ剥離が十分な解決策にならないのか、そしてなぜグロースファクターが最も合理的で安全な治療だと考えているのかを、医学的根拠と臨床経験を踏まえてお伝えします。
最後までご覧いただければ、きっと後悔のない選択をするための指針になるはずです。
目次
ほうれい線の“剥離(はくり)”とは?
「ほうれい線の剥離」とは、皮膚とその下層組織をつなぐ線維性の癒着を物理的に切り離し、凹みを浅く見せようとする施術です。
医学的には「サブシジョン(Subcision)」あるいは「皮下切離術」と呼ばれ、もともとはニキビ跡や瘢痕治療に使われる方法です。
施術では、専用の針やカニューレを皮下に挿入し、ほうれい線のライン上で組織を切り離します。
理論上は、内部の癒着を外すことで皮膚が持ち上がり、しわが浅くなるとされています。
このため「ほうれい線は癒着が原因だから剥離すれば治る」という説明を受ける方も少なくありません。
しかし実際には、ほうれい線の形成はもっと複雑です。
剥離で改善する可能性はごく一部のケースに限られ、多くの場合は根本的な解決につながりません。
ほうれい線の原因を正しく理解する
ほうれい線は「単なるしわ」ではなく、加齢とともに進行する複数の要因が重なって生じる現象です。
まず、真皮レベルではコラーゲンやエラスチンが減少し、肌のハリや弾力が失われていきます。
皮膚が薄くなって弱くなると、頬と口元の境界で皮膚が折れ曲がりやすくなり、徐々に溝が現れます。
さらに、皮下の脂肪は年齢とともに下垂し、組織の支えとなる靭帯も劣化して緩むため、皮膚が下方向に引っ張られます。
その結果、ほうれい線の影が強調され、溝が深くなっていくのです。
加えて、中顔面の骨格も重要です。
上顎骨や頬骨は加齢に伴い徐々に吸収・萎縮し、土台が小さくなります。
これにより皮膚や脂肪の支えが弱くなって下垂し、同時に鼻翼基部のくぼみや口角周囲もやつれて影が強調されます。
そして忘れてはならないのが「表情筋による折れ癖」です。
笑う、話すなどの繰り返しの動作によって皮膚に折り目がつき、やがて真皮レベルでしわとして定着し深く刻まれていきます。
確かに癒着も原因の一つにはなりますが、それは主役ではありません。
近年の研究でも、ほうれい線の本質は「皮膚弾性の低下と支持組織の変化」にあると報告されています。(GW Hong et al. 2024)
剥離治療の実態|効果が乏しくリスクが大きい
剥離は理屈の上では「癒着を切ればしわが浅くなる」というシンプルな方法ですが、実際には主因に働きかけられないため、効果は限定的です。
さらに、リスクも小さくありません。
針やカニューレで組織を内部から切り離すため、出血や腫れを伴いやすく、術後に数週間内出血が残ることもあります。
切り離した組織は再び癒着する可能性が高く、その過程で硬く拘縮してしまい、かえって凹凸や引き攣れが残ることもあります。
また、ほうれい線の周囲は神経や血管が複雑に走行する領域であり、感覚障害や血流障害といった合併症のリスクも否定できません。
本来「改善」を目的に受けた施術が、むしろ悪化や長引くダウンタイムの原因になることさえあるのです。
このように、剥離は「可能性があるように見える治療」ではあっても、臨床的には不確実であり、リスクの方が際立つ治療法といえます。
注入治療の優位性とグロースファクターの位置づけ
一方で、ほうれい線に対して安定した効果を示せるのは「注入治療」です。
ほうれい線は多くの場合、皮膚のハリが低下し、折れ曲がることで形成される溝が構造的な特徴です。
そのため、注射によって直接その溝にアプローチし、ボリュームを補ったり、皮膚そのものの再生を促すことで、しわを浅く目立たなくさせることができます。
こうした理由から、注入治療はほうれい線改善の第一選択とされているのです。
ヒアルロン酸注入は、溝を直接埋めることで短期的に見た目を改善でき、初めての美容医療としても選びやすい方法です。
ただし、持続期間が半年から長くても2年程度と限られており、定期的なメンテナンスが前提になります。
これに対して、グロースファクター治療はより根本的なアプローチです。
成長因子を注入することで、真皮内の線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチンの再生を促します。
皮膚そのものを若返らせるため、自然で長期的な改善が期待でき、笑ったときにも不自然さが出にくいのが特徴です。
実際に当院の症例でも高い満足度が得られています。
「剥離+注入治療」を推すクリニックの真相
近年、「剥離+成長因子(PRP・FGF・グロースファクターなど)」や「剥離+脂肪注入」といった複合治療を前面に押し出すクリニックが増えています。
一見すると“最新の相乗効果治療”のように聞こえますが、その背景には冷静に見ておくべき事情があります。
第一に、剥離だけではほとんど改善が得られないという逃げきれない現実があるため、付加的に成長因子や脂肪注入を組み合わせざるを得ないのです。
つまり単独では成果が乏しい施術を“組み合わせ”という形で補強しているにすぎないのです。
第二に、成長因子治療や脂肪注入は剥離を組み合わせたとしても、いずれも1回で十分な改善が得られるケースは決して多くはありません。
成長因子は複数回の施術や他治療との併用を前提に設計されていることが多く、脂肪注入もほうれい線部位は表情の動きが大きいため脂肪の定着率が低く、ほとんどの場合で複数回の施術が必要になることは周知の事実です。
ただし、中には当院のように、一度の成長因子(グロースファクター)注入で十分な効果を出せるように設計された治療も存在します。
ですがそうした場合には、そもそも余計な剥離を組み合わせる必要は一切なく、むしろ単独で高い満足度を得られるのが本来の姿です。
第三に、こうした複合治療を提案することで、高額な料金を設定しやすくなり、クリニック側にとって利益が増大するという経済的な理由が隠れています。
特に「脂肪注入+剥離」に関しては、本来脂肪を注入する際には必要に応じて剥離を同時に行うことが大前提であり、あえて“別メニュー化”して打ち出すのは患者側の知識不足に付け込み、利益を上げるための悪質な手法と言わざるを得ません。
つまり「剥離+注入治療」という宣伝は、患者にとって必ずしもベストな選択肢ではありません。
むしろ余計なリスクとコストを背負わせる可能性があるため、安易に飛びつかず、医学的な合理性と臨床的な根拠を踏まえて慎重に判断することが大切です。
当院の立場|剥離ではなく「根本改善」を第一選択に
こうした背景から、当院では剥離をほうれい線治療の第一選択とは考えていません。
確かに一部のケースで癒着が影響していることは否定しませんが、それは主因ではなく、副因に過ぎないからです。
原因の本丸に届かない治療を行うよりも、皮膚そのものを若返らせるアプローチこそが、確実かつ持続的な改善につながります。
剥離はむしろ新たなダメージを皮膚に与えるリスクを抱えており、かえって老化を早めてしまう可能性すらあります。
それよりも、皮膚内部のコラーゲンを再生させ、自然なハリを取り戻す治療の方がはるかに理にかなっています。
当院ではその代表として、グロースファクター治療を第一選択としておすすめしています。
まとめ|賢く治療法を選ぶために
ほうれい線は単純な癒着だけで生じるものではなく、皮膚のコラーゲン低下や脂肪・骨格の変化といった複数の要素が重なって刻まれるものです。
そのため、剥離を行ったとしても大きな改善は望めず、再癒着や拘縮といったリスクすら伴います。
逆に、皮膚の根本的な若返りを目指す治療こそが、長期的に見て最も自然で確実な方法です。
ヒアルロン酸注入やグロースファクター治療は、多くの症例で安定した成果を示しており、特にグロースファクターは「皮膚の質そのもの」を改善できる点で優れています。
「剥離+注入治療」をセットにして売り出すクリニックもありますが、それは剥離単独では改善しないための補強策であり、患者側の利益というよりはクリニック側の経済的意図が透けて見えることもあります。
安易にそうした宣伝に飛びつくのではなく、医学的に理にかなった選択をすることが大切です。
当院では、不必要なリスクを避けつつ、患者さまが長く若々しさを維持できるよう、グロースファクターを中心とした根本改善をおすすめしています。
無料カウンセリングも実施しており、お寄せいただいたご相談メールには、本記事を執筆している院長の私がすべて丁寧にご返信いたします。ほうれい線でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。