

著者
ほうれい線治療専門
東京リンクルクリニック
院長 沖津茉莉子
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美容医療の中でも人気の高いヒアルロン酸注入ですが、施術から数か月経って突然、注入した箇所に「しこり」や「腫れ」が生じたらどうしますか?
ダウンタイムはとっくに落ち着いているはずなのに…なぜ?と不安になりますよね。
実はこの謎のしこり、「遅発性結節」とよばれるものができている可能性が高いです。
この不思議な現象には、体の異物反応や、細菌がつくる「バイオフィルム」が関与していることも。
なぜこのようなことが起きるのか、どう対処すればいいのかを、この記事ではわかりやすく、そして専門的に掘り下げます。
知らないと不安になるリスクの一つを、ここで解消していきましょう!
目次
ヒアルロン酸注入による謎のしこり「遅発性結節」とは?
遅発性結節とは、ヒアルロン酸注入後、数週間から数か月後に遅れて発生する可能性のある副作用の一つです。
主な症状として、注入部位に硬いしこりや腫れ、赤みが生じ、痛みや熱感を伴うこともあります。
この現象は主に、注入されたヒアルロン酸製剤に対する体の免疫反応(異物反応)によって引き起こされることが知られています。
遅発性結節ができる2つの原因
1. 異物反応
遅発性結節ができる主な原因は、体内でヒアルロン酸に対して免疫反応(異物反応)が起こることによります。
特に、不純物の多いヒアルロン酸製剤や、防腐剤・安定剤などの添加物を含む製剤を注入した場合、これらの成分が体に「異物」として認識され、局所的な炎症反応が引き起こされます。
特に、交差結合が強い(硬い)製剤は分解・吸収されにくいため、長期間体内にとどまりやすく、この異物反応による炎症が慢性化することで、結節ができやすくなります。
2. 感染によるバイオフィルムの形成
ヒアルロン酸注入後、施術時に体内に侵入した細菌がヒアルロン酸の表面に「バイオフィルム」を形成することがあります。
バイオフィルムとは、細菌が繁殖して膜状の構造を作り、免疫細胞や抗生剤からの攻撃を回避する仕組みです。
この状態により免疫反応による炎症が長引くことで、線維化が起こり、遅発性結節ができやすくなります。
遅発性結節の治療法
遅発性結節の治療法は、細菌が関与する感染性の結節と、関与しない非感染性の結節によって分けられます。
非感染性の遅発性結節の治療法
非感染性の遅発性結節は、主に体内で起こる異物反応が原因となって発生します。
この場合、ヒアルロン酸溶解剤であるヒアルロニダーゼを用いて、結節の原因となるヒアルロン酸を溶解します。
また、慢性炎症による線維化が強い場合には、ステロイドの局所注射を併用することもあります。
これにより過剰な異物反応を抑制し、しこりや炎症の改善が期待できます。
感染性の遅発性結節の治療法
感染性の遅発性結節は、ヒアルロン酸注入時の衛生管理不足などにより生じた細菌感染や、それに伴うバイオフィルムの形成が原因となることが多いです。
この場合、ヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の溶解に併せて、感染を抑えるために抗生剤が使用されます。
感染が重度の場合や膿瘍をみとめる場合には、外科的な排膿処置が必要になることもあります。
遅発性結節に関するよくある質問
遅発性結節は完全に治るの?
適切な治療をおこなえば、遅発性結節は通常完全に治癒します。
ただし、放置すると状態が悪化し治療に時間がかかることがあります。
どのくらいの頻度で発生するの?
遅発性結節の発生頻度は1000件に1件未満とされています。
ただし、製剤の質や施術技術によって発生頻度は変わってきます。
遅発性結節ができやすい体質は?
自己免疫疾患がある方や、アトピーや喘息などのアレルギー体質の方、過去にヒアルロン酸注入でアレルギー反応が起きたことのある方は、遅発性結節ができやすい傾向があります。
遅発性結節ができやすい部位は?
血流が少なくヒアルロン酸が分解・吸収されにくい部位、たとえば鼻や唇、目の下などができやすいとされています。
遅発性結節ができやすい注入の仕方は?
一箇所に過剰な量の注入、浅い層への注入、不衛生な環境での注入は発生のリスクが高まります。
遅発性結節ができやすいヒアルロン酸は?
不純物が多く含まれる製剤や、強い架橋構造を持つ硬い製剤は分解・吸収が遅れるため、できやすい傾向があります。
遅発性結節が起きない注入治療
遅発性結節のような副作用が起きない注入治療にグロースファクター治療があります。
グロースファクターとは、皮膚の線維芽細胞を活性化させることでコラーゲンの生成を促し、皮膚にハリと弾力をもたらし、ほうれい線などのしわを改善させる治療です。
液体成分からなる製剤を注入するため、ヒアルロン酸のような異物反応が起きにくく、遅発性結節を形成するリスクはありません。
しこりや感染のリスクを回避したい場合に最適な安全性の高い治療法です。
まとめ
遅発性結節は、ヒアルロン酸注入から数週~数ヶ月後に遅れて起こる副作用の一つですが、その原因や適切な治療法を理解することで対処が可能です。
体内で起こる異物反応や、感染によるバイオフィルムの形成などが主な原因とされます。
治療にはヒアルロニダーゼやステロイド局注、抗生剤の投与などをおこないます。
発生のリスクを軽減するには、信頼できるクリニックで施術を受け、安全性の高い製剤を選ぶことが重要です。
また、遅発性結節のリスクのない注入治療にグロースファクター治療があります。
事前のカウンセリングとアフターケアを徹底し、安全な美容施術を心掛けましょう。