普段、患者様からヒアルロン酸注射について、「本当に失明のリスクがあるのか」と問われることがあります。
しかし、これは実際に起こり得ることで、全国各地のクリニックでよく行われている施術だからといって、リスクがないわけではありません。
今回は、このヒアルロン酸注射で起こる失明について、その可能性と対処法についてご紹介します。
ヒアルロン酸注射で失明する可能性はある
ヒアルロン酸は、液体ではなくゼリー状のため、万が一血管の中に入ってしまうと、血管が詰まる「血管塞栓」を起こすことがあります。
この詰まった血管が、「眼動脈」という眼球の血管だった場合、視力にとって大切な網膜細胞へ栄養が行き届かなくなり、視力が低下して失明してしまうのです。
実際に、このような失明が起こった事例の報告もあります。
ヒアルロン酸注射で失明が起こりやすい部位
これまでに、ヒアルロン酸注射による失明が起こった事例で多いのが、鼻へのヒアルロン酸注射です。
その次に、眉間、額、ほうれい線と続きます。
血管は、枝分かれしながらさまざまな部位とつながっているため、施術箇所が目の近くの部位でなくとも失明するリスクはあります。
ヒアルロン酸注射から失明するまでの時間
血の流れはとても速く、新幹線と同じくらいの時速200Kmだといわれています。
このため、ヒアルロン酸注射によって眼動脈が詰まった場合には、施術してすぐに症状が現れます。
この症状は視力障害だけでなく、頭痛、吐き気、眼痛、発汗もあります。
ヒアルロン酸注射で失明したときの対処法
ヒアルロン酸注射で失明してしまったときは、すみやかにヒアルロン酸を溶かすための溶解剤を注射します。
また、患部をあたため血管の開きを良くして血流を促進したり、マッサージしたりすることもあります。
しかし、一度失明してしまうと、このような対処法を行ったとしても、回復するのは難しいのが現実です。
ヒアルロン酸注射で失明を起こさないためにできること
ヒアルロン酸注射によって失明してしまった場合、回復させることは難しいため、いかに失明のリスクを下げるかが重要です。
失明の原因となる、血管内へのヒアルロン酸注入などを防ぐための方法として、以下のような対策があります。
・失明リスクの高い部位への施術をしない
・血管を傷つけにくいカニューレ針を使う
・注入する際に血液が逆流していないかに注意し、血管内に針が入っていないことを確認する
・ヒアルロン酸の注入はゆっくりと慎重に行う
このような対処を行い、十分に気をつけて施術したとしても、失明のリスクを0%にすることはできません。
また、これまでの失明した事例を見てみると、経験豊富な医師でも失明が起こった事例はあります。
この理由として、血管の流れは人によって違っていて、医師が学ぶ標準的な人間の構造とは異なる場合があるからです。
このため、どんなに人間の構造を熟知して気をつけていたとしても、標準的な血管の流れと全く違っていた場合には、血管を傷つけてしまうことがあるのです。
まとめ
ヒアルロン酸注射による失明は、とても稀なことですが、実際に血流障害によって失明した事例はあります。
また、失明の原因となる血流障害は、皮膚の壊死を引き起こす危険性をもはらんでいるのです。