著者
ほうれい線治療専門
東京リンクルクリニック
院長 沖津茉莉子
ヒアルロン酸注射は、お手軽に効果を得られるため幅広い世代で人気の高い治療ですが、一歩施術を間違えると血流障害など深刻な事態を引き起こすリスキーな面もあります。
また、施術によって感染やアレルギー反応が起きたり、しこりができてしまい長期間残ってしまうというケースも稀にあります。
医療行為にはどうしてもリスクはつきものですが、美しさや若々しさをブラッシュアップするためにはできる限りリスクを回避し、安全に満足のいく結果を得たいものです。
そのためには十分な情報収集をおこない、慎重に施術者を選定し、医師と十分に相談し納得した上で施術を受けることが重要です。
起こりうるリスク・副作用
腫れ
注射によって腫れが出ることがあります。
通常、腫れは数日で落ち着きますが、その後も注入したヒアルロン酸が体内の水分を吸収し膨張するため、その程度によっては注入部位がしばらく浮腫んで見えることがあります。
浮腫みは通常、1週間〜1ヶ月ほどで落ち着きます。
内出血
注射によって注入箇所が内出血を起こすことがあります。
針跡の点状出血が出たり、場合によってはあざができる可能性があります。
注入の際はできる限り見えている血管は避けて打ちますが、皮膚の深部に見えない血管もあるため、完全には避けられません。
体質的に出血しやすい方、血が止まりにくい方、皮膚の薄い方は起こりやすいです。
内出血が出てしまった場合、1〜2週間かけて消えていくため、その間はメイクでカバーして過ごしていただきます。
当院では、部位によっては内出血の起きにくいマイクロカニューレという専用の針を使用しています。
痛み・違和感
注入箇所につっぱりや重たさなどの違和感を感じたり、軽度の痛みが続くことがあります。
ほとんどの場合、1〜2週間で落ち着きます。
左右差
仕上がりの見え方に左右差が生じる場合があります。
人の体はもともと左右非対称にできています。
できる限り左右対称に近づけるよう、もとの左右差を把握した上でを注入量や注入法を調整していますが、どうしても完全に左右差をなくすことは困難です。
表面の凹凸
稀ですが、注入箇所の皮膚の表面に凹凸が出たり、注入箇所とそうでない箇所に段差や境目が生じる場合があります。
特に施術後、腫れや浮腫みが生じている時期は凹凸や段差が目立つことがあります。
通常は1週間〜1ヶ月ほどで徐々に落ち着いていきますが、稀に浮腫みが引いてからも軽度の凹凸や段差が残ることがあります。
その場合、ヒアルロン酸が吸収されるとともに目立たなくなっていきますが、時間がかかります。
非常に稀なリスク・副作用
血流障害
ヒアルロン酸特有のリスクとして、血流障害が起こることがあります。
ヒアルロン酸は透明のジェル状の製剤であるため、注入した際に血管を圧迫したり、誤って血管の中に注入してしまうと血管塞栓を起こします。
血流障害が起きると注入部位によっては、失明や皮膚壊死が起こる可能性があります。
万が一血流障害を疑うような症状(皮膚の変色、異常な腫れ、激しい痛みなど)が生じた場合、ヒアルロン酸溶解剤(ヒアルロニダーゼ)を打つことにより、症状は改善します。
しか気づくのが遅れた場合は改善できない場合もあります。
血腫
注射後皮膚の中で出血がなかなか止まらず、中に血のかたまり(血腫)ができてしまうことがあります。
体質的に血が止まりにくい方や、抗凝固剤(血液をサラサラにする薬)を内服している方は起きる可能性があります。
血腫ができてしまった場合、皮膚の中で自然に吸収されるのを待ちますが、数ヶ月かかることがあります。
感染
注射の際に針穴から皮膚の常在菌が入り込み、感染を起こすことがあります。
施術部位の消毒が不十分であったり、免疫力が低下している場合に起きやすいです。
症状としては、注入部位の腫れ、赤み、熱感、痛みなどがあります。
感染が生じた場合、抗生剤を投与して治療します。
ごく稀に感染によって、ヒアルロン酸の周囲にバイオフィルムとよばれる微生物の膜ができてしまうと、感染が慢性化しアレルギー反応が生じたり、ヒアルロン酸がしこりとなって長期間残ってしまう可能性があります。
アレルギー反応
稀ですが、ヒアルロン酸注入後アレルギー反応が出ることがあります。
ヒアルロン酸はもともと私たちの体の中に存在する物質であるため、アレルギー反応が出る可能性は低いですが、製剤の中に含まれる添加物や不純物に対し反応が起きる可能性があります。
症状としては、即時型アレルギーと遅延型アレルギーの2種類があります。
即時型アレルギーは、ヒアルロン酸注入後数分〜数時間以内に注入部位の赤み、腫れ、かゆみ、蕁麻疹などの症状が出ます。
遅延型アレルギーは、注入後数日以上経ってから注入部位に腫れや赤みなどが現れ、数ヶ月以降に注入部位が硬くしこりのようになってしまう遅発性結節ができてしまうことがあります。
アレルギー反応が出た場合、ヒアルロン酸を溶解する薬剤(ヒアルロニダーゼ)を投与します。
ヒアルロン酸を溶解してもアレルギー症状が改善しない場合は抗アレルギー剤やステロイドの投与をおこないます。
しこり
稀ですが、ヒアルロン酸を注入後数ヶ月以上経って注入部位にしこりができることがあります。
これは、ヒアルロン酸が体の中で異物として認識されると、免疫反応が起こりヒアルロン酸の周囲にコラーゲンの被膜が形成されることで生じ、遅発性結節とよばれます。
神経傷害
ごく稀ですが、注射の針によって神経が傷つき、施術後の痛みがしばらく続く場合があります。
通常は数ヶ月で神経が修復され、痛みは落ち着きますが、長期化する場合もあります。
まとめ
ヒアルロン酸治療は特有のリスクとして血流障害が起こる可能性があります。
重篤な場合では、失明や皮膚壊死に至るリスクもあるため、治療には正しい知識と適切な注入技術、そして細やかな注意力が必要です。
また、ヒアルロン酸は注入する量、位置、深さの微妙な差よって仕上がりの自然さや美しさが変わってくるため、技術や経験だけではなくセンスも問われる非常に奥の深い治療です。
当院では、これまでヒアルロン酸治療を1万件近くおこなっている医師が施術を担当しており、流れ作業ではなくお客様と十分なコミュニケーションをとり、施術に集中できる完全予約制の環境で治療をおこなっております。
ヒアルロン酸治療に関してご不明な点やご心配な点がありましたら、遠慮なく当院のメールフォームにてご相談いただけたらと思います。