• ヒアルロン酸

ヒアルロン酸で失明することも|安全性と本当に怖いリスクを医師が解説

説明


著者
ほうれい線治療専門
東京リンクルクリニック
院長 沖津茉莉子
ドクター紹介はこちら

「ほうれい線が気になってきたけれど、ヒアルロン酸は怖いと聞いて踏み切れない」
「失明したというネット情報を見て怖くなった」
「簡単な注射と聞くけれど、本当に安全なの?」

このような不安を抱えて検索された方も多いのではないでしょうか。

ヒアルロン酸は美容医療の中でも非常に人気の高い治療です。
施術時間は10〜20分程度、施術直後から若返り効果が期待でき、多くのクリニックで気軽に受けられます。

しかしその一方で、失明や皮膚壊死などの重篤な副作用があることも事実です。

私は美容皮膚科医として多くの患者様を診察してきましたが、実際には、

「そんな危険性があるとは一度も説明されませんでした」
「安かったので受けたけれど後から怖くなりました」

というご相談をいただくことが少なくありません。

実は、ヒアルロン酸という製剤そのものだけが問題なのではありません。
本当に重要なのは、どの部位に、誰が、どの深さで、どの量を注入するかです。

この記事では、ヒアルロン酸の本当の安全性について、医学的根拠と実際の診療経験の両方から詳しく解説します。

ヒアルロン酸は安全性は、施術する医師によって決まる

結論からお伝えすると、ヒアルロン酸は適切に施術すれば安全性の高い治療です。

しかし、美容医療の中では数少ない「稀ではあるものの取り返しのつかない合併症」が存在する治療でもあります。

そのため、「ヒアルロン酸そのものが安全か」というよりも、「担当医師のヒアルロン酸注入が安全か」という考え方が非常に重要です。

例えば、飛行機事故は極めて稀ですが、世界中で厳格な安全管理が行われています。

ヒアルロン酸注入も同じです。

事故の頻度だけを見るのではなく、事故を起こさないための技術や知識、万が一への備えまで含めて評価しなければなりません。

私はほうれい線治療専門のクリニックを運営していますが、実際にはヒアルロン酸を希望されても、別の治療をご提案することもあります。

理由は単純で、「できる治療」と「やるべき治療」は必ずしも一致しないからです。

▶︎[ヒアルロン酸治療の詳細をみる>

ヒアルロン酸で最も怖い副作用は「血流障害」

ヒアルロン酸で最も注意しなければならない副作用が血流障害です。

これは注入したヒアルロン酸が動脈を塞ぎ、その先へ血液が流れなくなる状態です。

血液は酸素と栄養を運ぶ役割があります。

道路に例えるなら、高速道路が突然完全に封鎖されるようなものです。

その先へ物資が届かなくなれば、街は機能しなくなります。

皮膚でも同じことが起こります。

酸素が届かなくなった組織は徐々に壊死し、治療が遅れると治りきらず、跡が残ることがあります。

さらに、目につながる血管で起これば網膜動脈閉塞を起こし、視力障害や失明につながる可能性があります。

場合によっては脳へと塞栓が及び、脳梗塞が報告された症例もあります。

頻度は非常に低いものの、起きた場合の影響が極めて大きいため、美容医療では最も重篤な副作用として扱われています。

▶︎[ヒアルロン酸注入のリスクや副作用についてみる>

実際に血流障害はどのくらいの確率で起こるのか

患者さんから最も多い質問が、「実際にはどれくらいの確率なのですか」というものです。

残念ながら世界共通の正確な発生率はありません。

理由は、血流障害が起きてもすべての症例が報告されるわけではないためです。

ただし、これまでのレビュー論文では血管閉塞はおよそ0.01〜0.05%程度、つまり約2,000〜1万件に1件前後と推定されています。

一方、失明はさらに稀で、およそ0.001%程度と推定されています。

つまり約10万件に1件程度という非常に低い頻度です。

数字だけを見ると安心される方もいるかもしれません。

しかし私は、この数字だけで安全と考えるのは危険だと思っています。

なぜなら、失明した患者さんにとっては確率は0%でも0.001%でも関係がないからです。

だからこそ、美容医療では「起こる確率」より「起こさないための対策」が重要になります。

▶︎[ヒアルロン酸注入による失明のリスクについてみる>
▶︎[ヒアルロン酸注入による皮膚壊死のリスクについてみる>

ほうれい線は実は顔の中でも注意が必要な部位

ほうれい線はヒアルロン酸注入を希望される方が最も多い部位です。

しかし、安全性という観点では決して簡単な部位ではありません。

特に鼻の付け根近くにある鼻翼基部には、目につながる重要な血管が存在します。

最近では貴族注射として人気がありますが、この部位は美容外科・美容皮膚科でも高リスク領域として知られています。

海外のガイドラインでも、鼻・眉間・鼻翼基部は失明リスクが高い危険部位として繰り返し注意喚起されています。

私はほうれい線専門で診療していますが、この部位へのヒアルロン酸は改善効果だけでは判断しません。

解剖学的なリスクまで考慮した上で、本当に必要な場合のみ慎重に適応を判断しています。

▶︎[ほうれい線のヒアルロン酸注入の詳細をみる>
▶︎[ほうれい線のヒアルロン酸注入のデメリットをみる>

実際にはリスク説明が不十分なクリニックも多い

美容医療はここ数年で急速に身近になりました。

ヒアルロン酸は短時間で終わる人気メニューであり、多くのクリニックで広告にも使われています。

もちろん、それ自体が悪いことではありません。

しかし実際には、「診察が5分もない」「同意書だけ渡される」「重大な副作用について十分な説明がない」というケースについて相談を受けることがあります。

その上、ヒアルロン酸は一度だけ受けたら終わりの治療ではありません。

半年から1年程度で定期的に繰り返す方が多く、そのたびに血流障害のリスクを負うことになります。

だから私は、価格やキャンペーンだけではなく、「この医師はリスクまできちんと意識して説明してくれるか」という視点でクリニックを選んでいただきたいと思っています。

あまり知られていない「遅発性結節」という副作用

失明や皮膚壊死ほど知られていませんが、遅発性結節という副作用もあります。

これはヒアルロン酸を注入して数か月から数年後に、突然注入部位に腫れやしこりが生じる現象です。

風邪をひいた後や歯科治療後などに免疫反応がきっかけとなり発症することもあります。

私のもとにも、「数年前に他院で入れたヒアルロン酸が急に腫れてきました」というメール相談が届くことがあります。

患者さん自身はヒアルロン酸が原因とは思っておらず、皮膚科や内科を受診して初めて分かることも少なくありません。

頻度は高くありませんが、こうした副作用まで理解した上で治療を選ぶことが大切です。

▶︎[ヒアルロン酸注入後のしこり(遅発性結節)の詳細をみる>

ヒアルロン酸溶解注射があるから安心、という考えは正しくない

ヒアルロン酸のリスクについて調べると、「もし血流障害が起きてもヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸溶解注射)があるから大丈夫」という説明を目にすることがあります。

確かにヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する酵素製剤であり、血流障害が疑われた場合にはできるだけ早く大量に投与することが推奨されています。

実際にヒアルロニダーゼがなければ救えなかった皮膚が助かるケースもあり、美容クリニックには必須の薬剤です。

しかし、ここで誤解してはいけないことがあります。

ヒアルロニダーゼがあることと、安全であることは全く別の話です。

交通事故に例えるなら、救急車があるから事故を起こしても大丈夫とは考えません。

最も重要なのは事故を起こさないことです。

ヒアルロン酸治療も同じです。

血流障害が起きてから対処するよりも、そもそも起こさない技術の方が何倍も重要なのです。

実際、網膜動脈が閉塞してしまった場合は、ヒアルロニダーゼを投与しても視力が完全に回復しない症例が数多く報告されています。

皮膚壊死についても、発見が遅れれば一生跡が残る可能性があります。

つまり、ヒアルロニダーゼは万能薬ではありません。

万が一のための保険ではありますが、それだけで安心してよい薬ではないことを理解しておく必要があります。

▶︎[ヒアルロン酸溶解注射(ヒアルロニダーゼ)の詳細をみる>

ヒアルロン酸の溶解にも知られていないデメリットがある

ヒアルロニダーゼは便利な薬ですが、デメリットも存在します。

まず、一度で完全に溶けるとは限りません。

ヒアルロン酸には様々な種類があり、硬い製剤ほど分解しにくい傾向があります。

そのため、数回に分けて注射しなければならないことも珍しくありません。

さらに、均一に溶けないことがあります。

一部だけ溶けてしまうと左右差や凹凸などの溶けムラが生じ、再度ヒアルロン酸を入れ直すケースもあります。

もう一つあまり知られていないのが、自分の皮膚にもともと存在するヒアルロン酸にも影響を及ぼす可能性があることです。

人の皮膚には自己由来のヒアルロン酸成分が存在し、水分を保持しながら肌のハリや弾力を支えています。

ヒアルロニダーゼは注入したヒアルロン酸だけを100%選択的に分解するわけではありません。

そのため、一時的に肌のハリが低下したり、小じわやたるみが目立ったように感じたりすることがあります。

もちろん時間の経過とともに体内でヒアルロン酸は再び作られるため、多くは徐々に改善します。

しかし、「溶かせば完全に元通り」と単純に考えるのは正しくありません。

実際には、溶かす治療にもリスクと限界があるのです。

なぜヒアルロン酸の事故はなくならないのか

患者さんから、「そんなに危険なのに、なぜ防げないのでしょうか」と聞かれることがあります。

理由はいくつかあります。

まず、美容医療市場が年々拡大し、ヒアルロン酸が非常に身近な施術になったことです。

現在では、多くのクリニックでキャンペーン価格が設定され、初めて美容医療を受ける方でも気軽に来院できるようになりました。

一方で、価格競争が激しくなり、短時間で多くの患者さんを診療し回転率を高めるスタイルのクリニックも増えています。

もちろん、価格が安いこと自体が悪いわけではありません。

しかし、診察時間が極端に短い場合には、「顔全体を十分診察する時間」「リスクを説明する時間」「本当にヒアルロン酸が適応なのか考える時間」が十分に取れない可能性があります。

私はメール相談で、「カウンセリングが数分で終わった」「医師とほとんど話をしていない」「急かされて質問しにくい雰囲気だった」というご相談を受けることがあります。

ヒアルロン酸は注射だけ見れば10分程度で終わる治療です。

しかし、本当に重要なのは、その前にどれだけ丁寧に診察し、適応を見極めるかです。

若手医師だから危険なのではなく、経験と教育体制が重要

「ヒアルロン酸治療では医師選びが大事」と話しましたが、ここで誤解していただきたくないのは、若い医師だから危険ということではありません。

経験年数だけで技術は決まりません。

十分な教育を受け、解剖学を理解し、安全を最優先に診療している若い医師も数多くいます。

一方で、経験年数が長くても、毎回同じ方法で漫然と施術している医師がいることも事実です。

本当に見るべきなのは、「解剖学を理解しているか」「リスクをきちんと説明しているか」「適応がなければ断る姿勢があるか」「緊急時の対応を理解しているか」です。

私は患者さんに、「症例写真だけではなく、その先生がどのような考えや姿勢で治療しているのかも見てください」とお話ししています。

安全なクリニックを選ぶために確認したいこと

安全性を重視するなら、価格よりも次の点を確認していただきたいと思います。

医師本人が十分な時間をかけて診察しているか。

リスクについて具体的に説明しているか。

失明や皮膚壊死といった重篤な副作用についても隠さず十分に説明しているか。

ヒアルロニダーゼを常備しているだけではなく、血流障害への対応手順が整備されているか。

適応がない場合には、別の治療法も提案してくれるか。

このような視点でクリニックを見ると、本当に患者さんのことを考えているかどうかが見えてきます。

ほうれい線にはグロースファクターという選択肢もある

ほうれい線治療という観点では、ヒアルロン酸だけが選択肢ではありません。

当院では、皮膚の折れ癖が主体となっているほうれい線にはグロースファクター治療をご提案することがあります。

グロースファクターは液体製剤であるため、ヒアルロン酸のようにジェル状の固体製剤を血管内に詰まらせる可能性がなく、血管閉塞による失明や皮膚壊死のリスクを避けたい方にとって検討しやすい選択肢です。

もちろん、すべての方に適応があるわけではありません。

骨格による深いくぼみではヒアルロン酸の方が適している場合もあります。

一方で、皮膚に刻まれた折れ癖や浅いほうれい線では、グロースファクターの方が自然な改善が期待できるケースもあります。

私は診察で、ヒアルロン酸を希望して来院された患者さんに、あえてグロースファクターをご提案することがあります。

逆に、グロースファクターを希望されてもヒアルロン酸の方が適していると判断することもあります。

治療法ありきではなく、原因に合わせて選択することが最も重要だと考えているからです。

▶︎[グロースファクター治療の詳細をみる>
▶︎[ほうれい線のグロースファクター治療の詳細をみる>
▶︎[ヒアルロン酸とグロースファクターの違いをみる>

ヒアルロン酸の安全性についてよくある質問

ヒアルロン酸は何度も繰り返すと危険になりますか?

一回ごとのリスクは非常に低いものの、治療回数が増えれば、それだけ合併症に遭遇する機会も増えます。

そのため、毎回安全性を重視してクリニックを選ぶことが大切です。

また、注入回数や注入量が増えることで、合併症以外のデメリットもでてきます。

▶︎[ヒアルロン酸の注入しすぎによるデメリットをみる>

血流障害は施術後すぐに分かりますか?

多くは施術直後から数時間以内に強い痛みが出る、急激に腫れる、皮膚が白っぽくなる、まだら模様になる、目が見えにくくなる、などの症状が現れます。

違和感があれば様子を見ず、すぐに施術を受けたクリニックへ連絡してください。

貴族注射は受けない方がよいのでしょうか?

骨格によるくぼみには有効な場合もあります。

しかし鼻翼基部は失明リスクが高い領域として知られており、安全性を十分理解した医師が慎重に適応を判断すべき治療です。

安いヒアルロン酸は危険ですか?

価格帯だけで危険とは言えません。

ただし、価格だけを理由にクリニックを選ぶことはおすすめできません。

診察内容や医師の経験、安全管理体制を総合的に判断することが重要です。

まとめ|安全なヒアルロン酸治療を受けるために

ヒアルロン酸は、適切に行えば非常に優れた若返り治療です。

しかし一方で、失明や皮膚壊死、遅発性結節など、美容医療の中でも重大な副作用が存在することも事実です。

大切なのは、必要以上に怖がることではありません。

また、手軽だからと安易に受けることでもありません。

まずは、自分のほうれい線がなぜ目立っているのか、その原因を正しく診断してもらうことが重要です。

その上で、本当にヒアルロン酸が適しているのか、それとも別の治療法の方が安全で効果的なのかを医師と一緒に考えることが、後悔しない治療につながります。

私は美容医療とは、単に治療を提供することではなく、患者さんが長期的に安心して歳を重ねられる選択をお手伝いすることだと考えています。

この記事が、ヒアルロン酸の安全性を正しく理解し、ご自身にとって納得できる治療を選ぶきっかけになれば幸いです。

当院はほうれい線治療を専門に行っており、メールでの無料カウンセリングも実施しております。

お寄せいただいたご相談メールには、本記事を執筆している院長の私がすべて丁寧にご返信いたします。

ヒアルロン酸注入を始めとするほうれい線治療をご検討中の方は、どうぞお気軽にご相談ください。

《出典》
Prevention and Management of Vision Loss Relating to Facial Filler Injections(PubMed)
Aesthetic Surgery Journal. 2015;35(8):1007-1015.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25587006/

《出典》
A systematic review of the literature on intravascular complications of facial aesthetic filler injections and a proposed management algorithm(PubMed)
Aesthetic Surgery Journal. 2021;41(10).
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33793908/

《出典》
Global Aesthetics Consensus: Avoidance and Management of Hyaluronic Acid Filler-associated Visual Loss(PubMed)
Plastic and Reconstructive Surgery. 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35077410/

《出典》
Delayed-onset Nodules Secondary to Hyaluronic Acid Fillers(PubMed)
Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology. 2016.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27672383/

《出典》
Consensus Opinion for the Management of Soft Tissue Filler Induced Vision Loss(PubMed)
Aesthetic Plastic Surgery. 2024.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38312415/