

著者
ほうれい線治療専門
東京リンクルクリニック
院長 沖津茉莉子
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鏡を見たとき、どうしても目が行くほうれい線。
「ヒアルロン酸なら手軽に改善できる」と聞いて興味はあるものの、「失敗したらどうしよう」と踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
実際、ほうれい線へのヒアルロン酸注入はお手軽で人気のある施術ですが、すべてのケースで満足できるとは限りません。
「膨らみすぎた」「位置がズレた」「すぐに効果がなくなった」など、思わぬトラブルに出くわす人も一定数存在します。
とはいえ、必要以上に恐れる必要はありません。
大切なのは、なぜ失敗が起こるのか、どんなケースでリスクが高まるのかを、事前に理解しておくこと。
この記事では、美容皮膚科医の視点からほうれい線のヒアルロン酸注入で起こりやすい失敗とその対策法を、専門的かつわかりやすく解説します。
「なんとなくの不安」を「納得の判断」へと変えるヒントとして、ぜひお役立てください。
目次
ほうれい線のヒアルロン酸注入でよくある失敗10選
口元が不自然に膨らみすぎた
注入量が多すぎた場合や、膨張性の高いヒアルロン酸製剤を使用した場合、ほうれい線が目立たなくなるどころか、口元や頬全体が膨れて太った印象に見えてしまうことがあります。
実際には、施術直後の腫れやむくみが影響していることもあるため、まずは1ヶ月ほど経過を見て判断します。
それでも自然に落ち着かない場合には、ヒアルロン酸溶解注射(ヒアルロニダーゼ)による処置を検討します。
ほうれい線の位置から微妙にズレている
本来のほうれい線の溝とはズレた位置にヒアルロン酸を注入することで、ほうれい線が目立たなくなるどころか逆に不自然な仕上がりになることがあります。
たとえば、ほうれい線の外側に注入した場合、かえって影やたるみが強調されたり、一方で溝の内側に注入した場合、口元に不自然な膨らみが生じることがあります。
こういったケースでは吸収されるをしばらく待つか、必要に応じて溶解処置をおこないます。
笑うと変なところが膨らむ
真顔の状態では目立たないのに笑ったときに不自然な位置が膨らむことがあります。
これは、ヒアルロン酸が表情筋の動きにうまく追従しきれないため起こる現象です。
特に、ほうれい線は表情変化の多い部位であるため、適応を見極めて注入しないと、笑ったときにぷくっと浮いてしまったり、口元に不自然な影が出たりすることがあり、客観的にも目立つ場合は溶解を検討します。
製剤の種類や注入の技術によりある程度の調整は可能ですが、限界もあるため、より自然な仕上がりを求める場合はグロースファクターによる治療に切り替えることも選択肢の一つです。
効果がほとんど感じられない
注入量が不十分であったり、柔らめの製剤を深層に打ってしまった場合は、見た目にほとんど変化が現れないこともあります。
一週間程度経過を見た上で、必要であれば追加注入を検討しますが、製剤が異なる場合には一旦溶解してから再注入するのが安全です。
表面に凹凸やミミズ腫れのような盛り上がりができた
皮膚の浅い層に硬めのヒアルロン酸製剤を注入してしまうと、ミミズ腫れのような膨らみや凹凸が皮膚表面に生じることがあります。
特に、浅いしわまで無理に消そうとして浅層に注入した場合に起こりやすく、ヒアルロン酸は刻まれたしわ(定着じわ)へのアプローチには限界があることを理解しておくことが重要です。
状態が目立つ場合にはヒアルロニダーゼによる溶解を検討します。
左右差が目立つ
施術前に元の左右差を考慮せずに注入を進めると、かえって左右差が強調されることがあります。
また、施術者とお客様が感じる左右差には、心理的なバイアスによりギャップが生じることもあるため、施術の途中で確認し合いながら丁寧に仕上げていくことが重要です。
仮人注入後に左右差が目立つ場合は、追加注入によりある程度の調整は可能です。
ただし元の骨格や頬の厚みの左右差など構造的な要因もあるため、完全に左右差をなくすことは難しいこともあります。
ヒアルロン酸が移動した・流れてしまった
注入後は自然だったのに、数日〜数週間経ってから「位置がズレてきた」「本来と違う部分が膨らんでいる」と気づくケースがごく稀にあります。
これは、製剤の質(凝集性)が低い、異なる種類の製剤を重ね打ちした、表情筋がよく動く部位だった、などが原因です。
中には、本来顔に使用すべきでないボディ用の製剤や希釈液で薄めた製剤を使っていたという悪質なケースも見かけます。
明らかに目立つズレが生じた場合は、ヒアルロニダーゼでの溶解処置が必要となります。
最初は良かったのにすぐに効果が消えた
ヒアルロン酸注入の直後に見られたちょうど良い「ふっくら感」が数日で消失してしまった場合、施術による一時的な腫れを効果として誤解していた可能性があります。
また、製剤が希釈されていたなど不適切なものだった場合、水分が吸収されたことでボリュームがなくなりあたかも効果として現れていたものが消退することもあります。
このような失敗を防ぐには事前に想定される効果をきちんと理解した上で、信頼できるクリニックで施術を受けることが重要です。
後からしこりができた
注入後数ヶ月経過してから急に硬いしこりが出現した場合、「遅発性結節」の可能性があります。
これは、体内のヒアルロン酸に対し異物反応や遅発性のアレルギー反応が起こり、炎症が慢性化し線維化が起こってしまった状態です。
治療にはヒアルロニダーゼや抗生剤、ステロイド投与などが必要になることもあります。
血流障害や内出血が起きた
ヒアルロン酸が誤って血管内に入ってしまったり血管を圧排してしまった場合、皮膚壊死や失明などの重大な合併症につながることがあります。
施術後すぐに「皮膚の変色(白色・紫色)」「激しい痛み」「しびれ」などの血流障害を疑う症状が生じた場合は、直ちにヒアルロニダーゼによる溶解処置をおこなう必要があります。
また、通常のリスクとして生じる内出血も、医師の技術や針の選定、患者の体質などによって頻度や程度が異なります。
内出血は通常1〜2週間程度で自然に消退しますが、体質や程度によっては数週間かかることもあります。
その場合も特別な治療は必要なく、消退するまで経過をみるのが基本となります。
失敗を回避するには|“自然な仕上がり”と“安全性”を重視した選択肢も
ヒアルロン酸注入によるほうれい線治療は、成功すれば即効性が高く、満足度の高い治療です。
しかし、上記のように製剤の選定ミス、医師の技術差、体質との相性などによって、トラブルが起きるケースも無視できません。
こうした失敗を未然に防ぎたい方には、ヒアルロン酸とは異なるアプローチである「グロースファクター治療」も選択肢の一つです。
グロースファクターは、皮膚の再生力を高めてコラーゲンを増やす治療で、注入による物理的な膨らみではなく、内側からの自然なハリの改善をもたらします。
血流障害や遅発性結節といったリスクがほとんどなく、ヒアルロン酸ではアプローチしにくい浅いしわや笑ったときほうれい線にも有効であることが特長です。
まとめ|ほうれい線のヒアルロン酸注入は「誰から」「どこで」受けるかで結果が決まる
ほうれい線へのヒアルロン酸注入は、たしかに効果的な治療法です。
しかし同時に、失敗のリスクを正しく理解し、信頼できる医師・適切な製剤・十分なカウンセリング環境が整っていなければ、満足のいく結果は得られません。
そして「自然に若返りたい」「注入の副作用が怖い」という方には、皮膚の再生医療であるグロースファクター治療も選択肢に入ります。
自分に合った治療を選ぶことが、後悔のない美容医療への第一歩です。
当院では、メールでの無料カウンセリングもおこなっておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。